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メタ認知向上を目指した新たな成人学習モデルの提案と検証

目 次 1.メタ認知向上を目指した新たな成人学習モデル提案の背景.......7 1.1.一企業における人材開発実践の場からの開発の要請................7 1.2.…

目 次
1.メタ認知向上を目指した新たな成人学習モデル提案の背景.......7
1.1.一企業における人材開発実践の場からの開発の要請................7
1.2.実践学習モデルの開発の背景にある日本社会との関連性...........…11
1.2.1.社会人基礎力が検討された背景...................................11
1.2.2.社会人基礎力の育成と新たな学習モデルとの関連.........................13
2.先行研究....................................16
2.1.成人学習........................................16
2.2.メタ認知研究の視座から.................................17
2.3.自己調整学習の視座から................................19
2.3.1.PIFSの成果................................................20
2.4.経験学習モデルの視座から..............................21
2.5.先行研究のまとめから仮説の提示..........................22
3.実践学習モデルの概要..........................…26
3.1.実践学習モデルが目指すもの..............................26
3.1.1.熟達化との関連..............................................28
3.1.2.ホワイトカラー育成との関連.......................................28
3.2.実践学習モデルに基づく学習デザインの実践例...................30
3.2.1.実践学習モデルに基づく学習デザインの第1フェーズの構造......................30
3.2.2.実践学習モデルに基づく学習デザインの第2フェーズの構造......................32
3.2.3.実践学習モデルに基づく学習デザインの第3フェーズの構造......................34
3.2.4.学習環境と学習モニタリング........................................35
3.2.5.スパイラル構造...............................................36
4.実践学習モデルを用いた一企業での実践と検証............37
4.1.実践学習モデルを用いた一企業での実践と検証の目的..............37
2
4.2.実験1の目的......................................38
4.3.学習期間と対象者.................................. 38
4.4.学習項目.......................................….38
4.5.学習方法.......................................….40
4.5.1.言語情報と知的技能に関する学習方法..............................…40
4.5.2.運動技能、態度に関する学習方法.................................…42
4.5.3.認知的方略に関する学習方法.....................................44
4.6.実験1での検証......................................46
4.6.1.検証する範囲................................................46
4.6.2.アンケートによる調査方法.........................................48
4.7.実験1の結果......................................52
4.7.1.学習直後の学習目標到達状況の検証................................52
4.7.2.継続した言語情報学習への影響の検証...............................53
4.7.3.一定期間(約1年)が経過した時点でのコンピテンシーへの影響の検証..............54
4.7.4.パフォーマンスへの影響の検証......................................55
4.8.実験1の形成的評価..................................56
5.実験2の実践と検証内容..........................58
5.1.実験2の目的......................................58
5.2.学習期間と対象者....................................58
5.3.学習項目........................................59
5.4.学習方法........................................59
5.4.1.言語情報と知的技能に関する学習方法................................59
5.4.2.運動技能、態度に関する学習方法.................................…62
5.4.3.認知的方略に関する学習方法.....................................64
5.5.実験2の検証......................................66
5.5.1.検証する範囲................................................66
5.5.2.アンケートによる調査方法.........................................67
5.6.実験2の結果......................................68
5.6.1.再現性の検証..............................................68
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5.6.2.実験2における変更が学習成果に及ぼす影響の検証........................69
6.まとめと考察..................................70
6.1.考察...........................................70
6.1.1.学習成果の視座からの考察.......................................70
6.1.2.成長速度の視座からの考察.......................................76
6.1.3.その他の視座からの考察.........................................78
6.2.結論...........................................79
6.3.今後の研究......................................…80
7.謝辞.......................................81
参考文献....................................................82
付録.......................................................85
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論文要旨
本論文は、成人学習において、メタ認知を向上することで学習成果が向上する成人学習モデルを構築し、その効果を検証したものある。成人学習における学習モデルとして、正統的周辺参加、経験学習モデルなどが提案されているが、本論文では、成人学習における自己調整学習を基にした学習モデルを提案し、提案した学習モデルの正当性を一企業における実践で検証を行った。
成人学習における学習モデルは複数存在するが、成人学習者個々の認知、および、メタ認知を向上することで学習成果を向上するモデルは見当たらない点に着目し、新しい学習モデルを提案した。提案した学習モデルは、成人学習において、学習目標を明確にし、他者を観察する力をつけ、自己評価力を高めることでメタ認知を高めながら実践し、その過程で、リフレクションを起こしていく学習方法である。
このモデルを検証するために、本学習モデルに基づいた教育実践を行った。 対象はMR(医薬情報担当者:Medical Representative)を目指す、ある企業に入社した新人社員である。この新人社員に成人学習モデルに基づく実践共同体による教育を実施した統制群と、本学習モデルを活用して設計した教育を実施した実験群2種を設け、学習目標到達度(学習6、9、12、15ヶ月後)の比較、対象社員の上司によるアンケート評価(学習3ヶ月後と1年後)、そして、顧客訪問を行った際の「宣伝回数」を用いたパフォーマンス評価(学習直後から1年間)について検証した。
その結果、本学習モデルに基づく学習は、知的技能、運動技能と態度の学習項目において効果的であることを確認した。言語情報の学習項目への影響は他の学習成果の発現時期とは異なるが、成果のあることが確認できた。また、学習成果の運動技能において、学習目標の設定方法と学習モニタリング機会が学習成果に関与することも確認できた。加えて、社会人基礎力における柔軟性のコンピテンシーに成果があることも確認できた。これらにより、本学習モデルによる学習は、学習者の成長を早める可能性があることが示唆された。
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Summary
In this study an andragogy model was constructed to improve learning outcome by increasing metacognition in andragogy, and the effects thereof were verified.
While processes such as the legitimate peripheral participation (LPP) and learning from experience have been proposed as learning models in andragogy, we proposed in this study a learning model based on the studies of self-regulated learning (SRL) in andragogy, and verified the propriety of the proposed learning model by practicing this model at one company.
There are several learning models in andragogy. However, no model is yet available for improving learning outcome by increasing the cognition and metacognition of individual adult learners. We focused on this fact and proposed a new learning model. The proposed model is a learning method in andragogy which is practiced to increase metacognition through the clarification of learning goals, acquisition of the ability to monitor others, improvement of self-assessment ability, and, in the process, offering opportunity for reflection .
In order to verify this model, an educational practice based on this learning model was conducted. The subjects of this study were new employees of one company who were prospective Medical Representatives. The subjects were divided into the control group, which was given education by a community that practiced the andragogy learning model, and the study group, which was given education designed by this learning model. The following were analyzed for validation: comparison of the degrees of achievement of the learning goals (at the 6th, 9th, 12th, and 15th months after the learning), evaluation questionnaires answered by the superiors of the subjects (at the 3rd and 12th months after the learning), and the performance evaluation using the number of promotional activities conducted when visiting clients (for one year immediately after the learning).
By analyzing the learning results obtained at the company, it was confirmed that learning based on this model was effective in the learning areas of intellectual skills, motor skills, and attitudes. It was confirmed that this model also strengthened the influence of the learning of verbal information over other learning areas, although the timing of its onset was different from learning outcomes in other areas. Motor skills as an outcome of learning was also confirmed to be influenced by the method of goal setting and the opportunity to monitor learning. Also, it was confirmed that this model improved competency of flexibility in basic skills for a member of society. All the above suggests that this learning model is capable of accelerating learners’ progress.
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本 文
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1.メタ認知向上を目指した新たな成人学習モデル提案の背景
筆者は、企業の教育担当を担っている。近年の企業において、従業員の自己成長への考え方に変化が見られる。成果主義の導入後、従業員個々は、自己成長に興味を持ち、自身の成長機会を求めるようになった。しかし、自己を正しく評価し、いかに自己成長していくべきかを理解し、実践しているヒトは尐ない。特に、この傾向は、近年の高等教育卒業者に多く見られる。自己の評価結果と自己成長への願望との間に、他者から見ると大きな齟齬が生じている場合が見られる。若者が、企業への入社後、早期に退社する傾向や、就職を躊躇する傾向が増しているのもその表れであろう。
一方の企業では、これまでの人材では、今後の企業運営が困難である事を理解している。すでに確立された知識体系に精通していることに加えて、世界全体が知識社会に移行する中で、変化する社会に応じて、既存の知識体系を見直す、若しくは組み合わせを変えて新たな価値を創造し、それを実践できる人材を求めている。すなわち、これまでの知識体系を早期に獲得した上で、自主的に批判的思考をもって、これまでのパラダイムを変革できるような人材に成長することを求めている。これは、日本にとどまらず、世界的な動向である。
このように、若い社員は、自己が何であるのかの理解に乏しい状況であり、企業は、今まで以上に、質の高い人材と、早期成長を望んでいる。企業が人材に望むものと、今後の社会を担う若者の現状との乖離は大きい。
このような企業内の人材育成に関する課題を解決するためには、既知の学習を促進し、自己理解を増し、成長を早めるような人材育成の仕組みが要求される。
1.1.一企業における人材開発実践の場からの開発の要請
筆者が勤める企業(日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社、以下NBI社)では、毎年、数十名の新入社員が入社し、6ヶ月間の教育を行い現場に配属する。新入社員は、この期間に、社会人として備えるべき態度、知識やスキルを身につける。すなわち、業界に必要な基礎的な知識の習得、製品に関する戦略理解と知識、これらの知識を基に顧客と人間関係を構築する方法や、セリング・スキル、プレゼンテーションスキル、One on Oneによるセールストークなど、様々な知識とスキルの習得を行なう。
この新入社員への教育は、2004年に改革が行なわれ、成人学習に基づく学習方法、
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すなわち、学習者主体の教育に変更された。具体的には、2003年以前の教育は、日本における学校教育の教室運営に最も多い方法である、講師による講義形式を採っていた。2004年より、講師による講義形式を一切中止し、学習者が3人1組のチームを作り、学習者同士で共同学習を行なう方法に変更した。その結果は、新入社員配属後3ヶ月経過時点での、配属先の上司による新入社員への評価を、アンケート調査にて確認された。以下の項目において、上司が「非常に満足」「満足」と回答した割合に変化が見られた。
 顧客とのコミュニケーション:50%(2003年)→65%(2004年)
 上司とのコミュニケーション:72%→94%
 挨拶:78%→90%
 マナー:68%→75%
その後、2007年まで、同様の教育が毎年実施された。この4年間、毎年、形成的評価が実施され、課題の与え方の変更や、行動に対するリフレクションを促進するためにVIDEOを導入するなど、いくつかの変更が行なわれてきた。しかし、各年の教育後の新入社員への上司による評価において、2004年に改善が見られた以外に、2007年まで大きな改善は得られなかった。
2007年に、これらの結果を総合的に検討し、何が課題であるのかを抽出し、一つの仮説に到達する事ができた。すなわち、学習者自身は、共同学習と言う社会的な活動に近い環境下で、どのように学べば学習が促進するのか、または、どうすれば自分自身が成長できるのかについて理解していない、あるいは、理解しているが実施できないということであった。
このような仮説に到達した経緯について、もう尐し、詳しく述べることにする。
筆者は、入社直後から6ヶ月間の学習期間にて、成長していく新入社員と、なかなか成長しない新入社員の違いがどこにあるのかを探るために、2007年入社の新入社員に構造的なインタビューおこなった。確認した項目は、以下の項目であった。
 学習開始段階での目標をどこに置いていたのか。
 学習を行う過程で、学習目標に向けてどのような計画を立てて、毎日の学習を行ってきたのか。
 学習計画とおりに学習が進んでいたのか。
 学習計画とおりに学習が進まない場合は、どんな対策を立てていたのか。
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 学生時代に、学びを得たのはどんな時であったか。
 学生生活での交友範囲はどの程度であったか。
このインタビューで明らかになったことは、以下のことであった。
 最初に設定した学習目標が高い新入社員は、高い成果を出していた。
 学習計画を立てている新入社員のほうが、学習計画を立てていない新入社員より、高い成果を出しているようであった。
 学習計画とおりに学習が進まない場合に、立案した計画に固執せず(例えば、その日できなかったことを翌日に持ち込まない)に、学習を進める傾向の新入社員のほうが、高い学習成果を出しているようであった。
 最初の4項目にポジチィブな対応をとった新入社員の、学生時代の交友関係は広い場合が多かった。
 最初の4項目にポジティブな対応をとった新入社員は、「学生時代に学びを得たのはどんな時か」という質問に、固有のヒトから学んだという回答があるのに対し、最初の4項目にネガティブな対応をとった新入社員は、明確に回答できない場合が多かった。
入社後に成長していく新入社員とそうでない新入社員の違いは、学生時代の生活環境が影響しているのではないかという傾向が見られた。特に、学生時代のヒトとの交わり方に大きな違いがあるようであった。入社後成長していく新入社員は、学生時代に比較的多くのヒトと交わる環境で生活をしていた。たとえば、アルバイトでヒトと交わる機会が多いアルバイトをしていた、サークルや部活動にて、名ばかりのサークルではなく実際に活動していた場合や、ゼミで積極的な活動を行い、ゼミの教授や先生方との交流が多いなどの場合であった。これに対し、ヒトと交わる機会が尐ない学生時代を送ってきた、たとえば、数人の気の合う仲間との交流が主で、多くのヒトとの交流機会が尐ない場合には、入社後の成長が遅いようであった。
このような指摘は、企業の人材育成担当者や、人事担当者の間では、「学生を採用するなら、学生時代に何かに真剣に取組んでいるヒトを採用する」とか、「アルバイトをして、学生時代から社会との接点を持っている学生を採用する」という言葉が意味するところと同一である。
このインタビュー結果より、入社後に成長を引き起こしにくい新入社員は、学生時代の
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生活環境が一つの原因で、周りのヒトから学ぶ機会を逸している、あるいは、周りのヒトから学ぶ機会を持ちたくないというところに起因していると考えるに至った。
しかし、このような新入社員が、企業に入社すると、彼らを取り巻く生活環境は大きく変化する。新入社員は、自身が関わるヒトを選択できないし、否応無しに、彼らの生活に関わるヒトが増加する環境が用意される。この環境は、新入社員が学ぶために重要な環境であるにもかかわらず、学生時代を狭い交友範囲の中で生活してきた新入社員は、この学習機会を捉えて、学習していくことが困難なようである。
変化する生活環境を利用して、自身が成長できるような方法を学ぶことが出来れば、新入社員は、職場を通じて学習し、成長できるようになる。
この生活環境の変化に近い理論として、LAVE and WENGER(1991)が示す、状況的学習において、実践共同体(実践コミュニティ)に参与することを通して学ばれる知識と技能の初期のプロセスである、正統的周辺参加(Legitimate Peripheral Participation, LPP)がある。この中で、LAVE and WENGER は、学習を指導者から学習者へある知識や技能が伝達される過程と捉えるのではなく、学習者が「実践の共同体(community of practice)」に参加することであると考えた。そして新参者が、共同体の文化社会的実践の十全的参加をする者へ移行する過程を学習としてみなしたのである。
このような理論を構築する過程で、最初に彼らは伝統的な「徒弟制」に着目した。リベリアの仕立屋の手工業徒弟制を観察し、「目常の仕立て作業で、ことさら教え込まれたり、試験を受けたり、あるいは機械的な真似ごとに終始するといったことがないまま、どうやって徒弟が、共通の、構造化されたパターンの学習経験に従事できるのか、それでいておどろくほどの尐数の例外を除くと、みんな技能に長けた、尊敬される仕立屋の親方になれるのはどういうわけか」といった疑問を、彼らはもったのである。そして、徒弟制を包含する実践の共同体の中では、物や人が、新参者を十全的参加者へと導くように構造的に配置されていることに気づいたのである。
しかし、筆者は、ただ単に、共同体を提供するだけでは、正統的周辺参加から十全的参加に向けての学習が起こるとは限らないことを指摘する。ただ単に、新入社員を実践共同体に参加させても学習機会として捉えられずに、学習が起きにくい新入社員が多いということである。1例としては、同じ共同体に複数の新入社員を参加させた場合、彼らの成長は同じように進まない事を、多くの方が経験した事である。全く学習が起らないわけでは
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ないが、より効果的な方法があると考える。
LAVE and WENGER の言う正統的周辺参加について、ハンクス(1993)は、学習の構造が何であるかという考え方に対する根本的な革新であり、「学習を命題的知識の獲得と定義するのではなく、LAVE and WENGER は学習を特定のタイプの社会的共同的参加という状況の中におく。学習にどのような認知過程と概念的構造が含まれるかを問うかわりに、彼らはどのような社会的関わり合いが学習の生起する適切な文脈を提供するのかを問う」と的確に示している。
この視点に立つと、参加者の認知過程や概念構造を含まず、参加すると言う行為が学習を生み出すと言う事になる。確かに、彼らが観察したいくつかの徒弟制の観察結果では、複数の新参者が、ある実践コミュニティへ参加し、状況的学習の深度により正統的周辺参加から十全参加(full participation)に移行した。しかし、この場合の実践コミュニティのあり方が重要である。
企業において、社員教育を行なう際は、これで十分であろうか。LAVE and WENGER はリベリアの仕立屋を観察し、「徒弟制を包含する実践の共同体の中では、物や人が、新参者を十全的参加者へと導くように構造的に配置されていることに気づいた。」とある。リベリアの仕立屋の事例では、新参者は、参加する事で十全へ導かれるように仕組まれていたはずである。
企業における社員の教育において、リベリアの仕立屋で行なわれている仕組みとは如何なるものであるか。もし、ホワイトカラーにおける社員への教育に、仕立屋の仕掛けが提供できれば、新参者(社員)は、実践共同体に参加する事で、その仕組みに乗り、成長していく事になる。特に、周囲からのヒトや情報から学習が進まない社員が実践共同体に参加し、成長できるような仕組みが提供できれば、多くの新入社員の成長を見込めることになる。筆者は、これを実現するために、メタ認知向上を目指した学習モデルの開発を開始した。
1.2.実践学習モデルの開発の背景にある日本社会との関連性
1.2.1.社会人基礎力が検討された背景
2006年1月28日に経済産業省から報告された、「社会人基礎力に関する研究会 中間とりまとめ」(経済産業省2006)によると、職場や地域社会の中で多くの人々と接触し
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ながら仕事をしていくために必要な能力を「社会人基礎力」と名付け、その定義や育成・評価、活用のあり方等について、現時点での考え方の整理を行っている。
社会人基礎力が論じられるようになった問題意識としては、世界全体が知識社会に移行する中で人的資本の重要性が高まった事による。ここで言う人的資本とは、すでに確立された知識体系に精通している人材ではなく、すでに確立された知識体系に精通していることに加えて、変化する社会に応じて既存の知識体系を見直す、若しくは組み合わせを変えて新たな価値を創造し、それを実践できる人材が求められている。
先進的な諸外国では、こうした認識をいち早く持ち、社会人基礎力に相当する能力の定義を図り、その育成の必要性を政府が示すとともに、教育界と産業界が連携して能力育成に乗り出した(AUSTRALIAN NATIONAL TRAINING AUTHORITY 2003)。
一方、社会人基礎力が論じられるようになった日本の国内事情としては、近年、若者のコミュニケーション能力の不足が指摘されるなど、日本社会の中でこうした能力を身につける仕組みのはたらきが相対的に低下してきているように感じられることが挙げられる。社会人基礎力は、若者が様々な人々との接触の中で物事に取り組んでいく上で必要となるだけでなく、人が40歳代、50歳代となっても、それぞれの年齢や仕事の内容に応じて必要となる能力である。
日本国内で発生したこれらの問題の発生原因としては、個々の成長過程における問題として、「子供が大人になるプロセスで、家庭や地域社会の中で「自然に」身に付けられるもの」と認識してきたことが機能不全となっていることによる。また、ビジネス環境の変化による発生原因としては、企業の経営課題が「既存の成功モデルの踏襲」から「新しい価値の創出」に軸足を移すにつれ、人との接触の中で仕事に取り組む能力が必要とされる場面が増えてきていることに起因している。
このような背景の中、社会人基礎力は以下の3つに定義された。
①「前に踏み出す力」(アクション)」~一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力~
・実社会の仕事において、答えは一つに決まっておらず、試行錯誤しながら、失敗を恐れず、自ら、一歩前に踏み出す行動が求められる。失敗しても、他者と協力しながら、粘り強く取り組むことが求められる。
②「考え抜く力」(シンキング)」~疑問を持ち、考え抜く力~
・物事を改善していくためには、常に問題意識を持ち課題を発見することが求め
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られる。その上で、その課題を解決するための方法やプロセスについて十分に納得いくまで考え抜くことが必要である。
③「チームで働く力」(チームワーク)~多様な人とともに、目標に向けて協力する力~
・職場や地域社会等では、仕事の専門化や細分化が進展しており、個人として、また組織としての付加価値を創り出すためには、多様な人との協働が求められる。自分の意見を的確に伝え、意見や立場の異なるメンバーも尊重した上で、目標に向けともに協力することが必要である。
また、社会人基礎力の3つの能力における具体的な能力要素は以下のように定義された。
①「前に踏み出す力」(アクション)」:主体性、働きかける力、実行力
②「考え抜く力」(シンキング)」:課題発見力、計画力、創造力
③「チームで働く力」(チームワーク):発信力、傾聴力、柔軟性、状況把握力、規律性、ストレスコントローリング力
しかし、社会人基礎力は社会で活躍していく上で必要な能力であるが、それで十分と言うわけではない。基礎学力や専門知識などは仕事をする上で重要な能力である。また、人間性や基本的な生活習慣を身に付けていることがあらゆる活動を支える基盤となることは間違いないと考えられている。社会人基礎力は、基礎学力、専門知識、人間性や基本的は生活習慣と重なる部分があり、相互に作用しながら、様々な経験等を通じて循環的に成長していくと考えられている。
1.2.2.社会人基礎力の育成と新たな学習モデルとの関連性
経済産業省が示した、2007年5月17日「社会人基礎力」育成のススメについて~社会人基礎力育成プログラムの普及を目指して~ (経済産業省2007)では、社会人基礎力を育むための教育・学習モデルが示された。ここでは、社会人基礎力を伸ばすだけではなく、同時に基礎学力や専門知識を身につけ、その取得に向けた学習意欲を増進させることができるような仕組が必要であるとしている。知識教育と連動して、習得した基礎学力・専門知識を活用する実践教育を実施し、その中で社会人基礎力を育成するとともに、そこで必要な知識の不足に気付くことで更なる学ぶ意欲を喚起し、また知識教育に戻っていくという、「知識教育」と「実践教育」の相乗効果による「成長の好循環」を実現することが
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重要である。
また、具体的な実施手順と留意点が示され、プログラム実施前、プログラム実施、プログラム実施後と体制整備に関する実施手順と留意点を詳細に示している。
ここで述べられているポイントは以下である。
 受講者が自らの多様な能力に気付く事を目的とするため、社会人基礎力の3つの能力の12の要素を育成・活用するプログラム要素を盛り込む
 個別のプログラム要素を盛り込む
 専門知識や思考法・計画策定手法を学ぶ機会が並行して用意されている
 受講者のサポートとして、受講者が主体的に取り組んだり、創造性を発揮したりできるようアドバイザー的なサポートにとどめる
 実施中の育成効果の確認として、自己・他者による評価を実施し、能力育成目標および学習計画の進捗を確認する機会をもつ
 プログラムでの活動を通じて、受講者の能力がどのように変化したかをモニタリングする必要がある
 教職員向けの評価ガイドラインを作成する
 育成効果の確認として、どの能力がどれくらい伸びたのか、あるいは、低下したのかを確認する必要がある
 一定期間経過後にも再度評価を行うことも有益である
 ティーチング・アシスタントやメンターを確保する
 全プログラムを通じて、産官学が協同してプログラムに参加することが必要
本報告に基づく大学での取り組みが始まっている。まだ、明確な成果を出したと言う報告はない。また、大学での取り組み内容をみると、学習者の認知過程に焦点をあてたプログラムとはなっていない。教授側に視点を置いて、学習環境やカリキュラムが構築されている。
企業では、社会人基礎力を具体的に向上する教育手法に試行錯誤しており、具体的な教育手法の提案が待たれている。
実践学習モデルは、一企業の人材育成の課題への対処として開発が始まった。社会人基礎力の策定の目的にあるように、日本国内の企業人育成に関する課題も、同一の内容である。ゆえに、実践学習モデルが企業内の人材育成に貢献し、社会人基礎力を向上できるなら、日本国内の企業における人材育成にも寄与する可能性を持つ。また、世界的に産業構
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造が、知的産業化する過程で、企業人の育成モデルとしての活用の可能性も秘める事になる。

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作者: 中国论文网

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